カルドナの教会 Colegiata de Sant Vicenç

カルドナの城の中にあるこの教会は51x23.5mという中々の規模である。この教会の存在はすでに980年に記録されている。建設が始まったのは1019年前後ということで、1040年には奉納されている。その後1592年まではカルドナの有力者たちが、修道長の管理下に運営するという形になっていたが、その後要塞として城自体が軍の手に移ると徐々に修道僧の撤退を余儀なくされ1794年には完全に軍の手に移り、以降倉庫として使われていた。1931年国のモニュメントとして指定され、その18年後に修復工事が始まった。

ロマネスク期にゴシックの構造体を持って設計されたということだが、実際に建設に携わった人はエンジニア、しかも軍の専属のエンジニアが設計したのではないだろうか 僧侶や建築がやったのではこんな邪念のない建物は出来ないのではないだろうか。

身廊側面

堂内に展示されているセクション模型


3身廊形式、筒状ヴォールトという典型的なロマネスク・スタイル 今年のイースター時にヴォールトからの落石があり、現在ネットが張られている

地下聖堂


J.Puig y Cadafalch他著L'Arquitectura Romanica Catalunya Vol II Del Segle IX al XIより

サンゼセンス・デ・カルドーナ教会
1040年奉納。ブレモンド子爵Bremondoがリポーイの司教オリーバの勧めでサン・ビセンスの既存の建物をを改修させようとしたのは1019年であった。その後10年の間計画を練るが、ようやく着工した1029年には他界してしまう。遺志を継いだエリバイEriballは1040年10月23日にこれを完成させているが、彼も完成の2か月前に他界してしまったといういわくつきの教会である。(正確にはカレッジの付属教会)。ロマネスクでありながら、すでにその構造の理論性と、明解なプロットによる設計という手法はゴシックのそれといえる。しかも、ロマネスクの盛んな11世紀中頃の建設というその時代の早さが歴史的にいえばおもしろい。カタロニア人の合理精神が、風景の中のランドマ一クのように反映しているのもおもしろく、そして次に続くカタロニア・ゴシックへの期待さえこの教会からは読みとることができる。
『我が街バルセローナ』TOTO出版
P.26より
1991年刊