Murcia2011.11.03


ムルシアのカテドラル正面
1980年代撮影

ムルシアに来たのはこれで3度目になる。最初に来たのはバロックのカテドラルのファサードを見にきた時だ。バロックファサードとしてはバレンシアのそれと並びよく知られている。ゴシックの垂直性からすれば、バロックファサードは見栄えがして兎に角派手だ。横に広がっているという感じであろうか。バロック時代の創建ではないので内陣のドラマチックな空間構成があるわけでもない。しかしここの鐘塔は面白くスロープで上まであがれる。こういう例はセビリアにもあって、そちらの方はキリスト教の教会ではなくモスクに付随するミナレット起源である。しかし登ったことはなく今回も登れるチャンスはないだろう。鐘塔はこのカテドラルのなかでも一番時間がかかった部分である。何層にもなっているが、その層ごとにスタイルが違っているというのも面白い。一番下の部分は1521年ミケランジェロの弟子でイタリアの建築家兄弟Jacopo Torni, llamado Florentino o L'Indaco (1476〜1526年),によってルネッサンス様式にプラテレスコの装飾が付けられて設計。第2段はスペイン人Jerónimo Quijano (1500頃〜 1563年)によってスタイルは変えず、更に単純化して建設1555年に完成している。その後2世紀にわたり工事はストップ。第3層は1765年バロックスタイルで着工。時計が置かれ、また地盤沈下による傾きを修整する手立てがとられた。第4層目は4隅にテンプルが置かれ、聖人の像がまつられている。第5層はロココスタイルで25の鐘が置かれている。頂点部分はネオ・クラシックの大家Buenaventura Rodríguez Tizón,通称 Ventura Rodríguez ( 1717〜 1785年)によって設計、1793年に完成している。カテドラルの前は広場になっているのだが、この広場に面してはやはりバロックの赤いスタッコ壁の司教館がある。更に市役所のエクステンションが広場に面して置かれてある、市役所はもともと広場にちょっと顔を出すようなところにあったのだが、このエクステンションは広場に顔を乗り出している。この部分を設計したのはラファエル・モネオで、彼らしいキッチリとした設計だ。切石積み、窓も絞りこんであって、ローマ、ロマネスクの感?の現代建築だ。この近年のデコンはじめ、ネオ・バロック、新建材を建築に無理やり押し付けて設計しているような作品に飽きてくるとやはりモネオの建築は落ち着く何かを持っている。この市役所を設計すると同時に広場も設計したらしい。周辺はトラバーチン、中央部分の方がバサルトで、こちらはピンコロ状に敷きつめられている。夏にはこの黒では暑そうであるがこの色のおかげで全ての建物が落ち着いて見える。周辺が明るいトラバーチンだから、これに面している建物との馴染みもいいはずだ。教科書通りの設計と言えば言える。あるいはムルシアの気候を知らずに設計したのだろうか。レベルの取り方も地元の建築家たちからの評判は必ずしもよくない。様々な時代に作られた建物は不動沈下もあり、難しいというか厄介な課題であろう。この中で司教館の建物が好きだ。コートヤードを持ち外部とはマッシヴな閉じたものだが、アーチの入り口がコートヤードをつき切って反対側にまで通り抜けこれが街路の一部に組み込まれている。これを設計させた司教というのは面白い人だったのだろう。民衆を司教館に呼び込もうということだから・・・・。

2011年11月3日撮影

2011年12月2日撮影