機能主義的なサンタ・テレサ

教団からの要求、つまりアートよりは経済性を重視せよという要求が、学校を自然と機能主義的な傾向へと導いた。建設は1888年8月27日に着工、1890年4月に竣工しているが、4層のレンガ造、一部石造が併用されている。建物は58メートル半の細長いファサードを持ち、等分され連置された窓割り、装飾は極力避けられ、結果的にガウディの全作品中最も機能主義的性格をもった作品となっている。外観からはガウディの作風をわずかに示す、窓と中央エントランスのパラボラ・アーチ、そして最下部の窓と中央エントランスに取り付けられた鉄細工、またほとんど唯一の装飾的モチーフとなってファサードを飾っているいくつかのセラミックのデザインであろうか。


エントランス周り
1972年3月16日撮影

しかしセラミックのいくつかのエレメントのひとつには、後年シンボル化され、あらゆるところにガウディが使ったダブル十字が、ここで初めてこの建物の四隅を飾っている。このダブル十字とは十字型というのは2本の直線材で描かれるため2次元になってしまうのに対し、さらに交差部でもう一本部材を水平にこれを貫くように加えてやることで、多面化させ、無方向性を持たせるものであるが、これによってどこからも見られることになってシンボルとしてのメリットは更に向上する。サグラダ・ファミリアほもちろん、ベジェスグアルド、カサ・バトリョ、ラ・ペドレラなどほとんどの作品にこのダブル十字が使われている。

2010年10月17日

また、ファサードのデザインの厳格さは、要塞を思わせる、というかアビラの市壁をイメージしている。

1972年3月16日撮影
平面計画もファサード同様明快で、主正面ファサードと平行に、中央に廊下を走らせ、そのエントランスの交差上奥に垂直動線を取っている。つまり十字に移動空間を配置し、その十字を矩形に閉じるように教室、事務所などの主空間を配している。また軸となっている廊下には二つの明りとりのためにパティオが切り取られていて、3層を通して主階まで自然光が取り入れら得ている。第2層の廊下は下階より更に幅を広くとり、パティオをコアとして扱うことによって廊下を2分させ、そこにパラボラ・アーチを掛けたが、そのアーチの中点上に上階の壁軸が置かれ、同様に主階では上階の並列するふたつのアーチをひとつの更に大きなアーチで支えている。ガウディらしい空間となっているのは、このライト・ウエルで作られた自然光が入る気持ちの良い、しかも健康的な配慮である。