サンタ・マリア・デル・マル Santa Maria del Mar

バルセロナの現在のホット・ポイントである、ボルネ地区にあるサンタ・マリ・デル・マル教会Santa María del Marはカタラン ・ゴシックの代表的な教会と評価されている。この辺りは旧市街が観光客に占拠されてしまったが、ボルネはデザイナーなどが最近集まって、気の利いた店が並ぶようになった。こちらもピカソ美術館が近いのでどうしても観光客は流れてくるのは同じかもしれないが、どこにでもあるお土産屋は少ない。この中にひと際目立って建ちあがっているのがこの教会だ。
外壁はペラリとし、マッシブな外観。これもカタロニア・ゴシックの特徴の一つとなっているが、内側にというかバットレス間にチャペルを置いて、外にはみ出さない事になっている。つまりバットレスも外壁のデザイン・エレメントとはなっていなく、外壁の中に取り込まれているようになっているためペラっとしているのだ。内部は3身廊形式で、交差廊を持たず、周歩廊をアプス後方に回すという事になっているが、非常に透明感のある、気持ちのいいスペースとなっている。せい高でしかも細い柱が林立し、堂内全てが見渡せる。ヴォールトには穴があいていて、外光が見えるのはいかにも南欧である。ヴォールトには甕が埋め込んであって、これで音の反射を一部吸収するという細かな配慮もある。にくい設計者だ。
教会は 1329年から1383年の間にベレンゲール・デ・モンタグットBerenguer de Montagut(14世紀に活動)の設計を基に建設され1931年以降はラモン・セスプーチ Ramón Despuig が工事を受け継いでいる。ベレンゲールについてはほとんど知られていないが、マンレサのカテドラル、パルマ・デ・マジョルカのカテドラルの建設にも参加したらしいがロクな記録が残っていない。ラモン・セスプーチもビックの回廊建設に1324年から1339年に携わったとされているが、1329年以降はこのサンタ・マリア・デル・マルに働いている。
教会の起源は将来の発掘を待たねばならないが、ローマの円形劇場、あるいはサーカスの上に建てられたのではないかと憶測されている。
この教会は氏子の提供した資金でこの教会は建てられたという事が側面部分に張られた記念プレートに刻まれている。これはカテドラルの建設が貴族の資金をもとにしていたのに対し、こちらは住民の資金で建設され、港の荷担ぎ人夫が石材の運搬には手を貸して、これが正面入り口の門にオマージュされている。

かつて石を運んだ人たち


ネフの外壁に張り付けられている起工のいわれ