図版 82〜89  Palacio Güell

グエル館,ダイニング・ルームと主階段ステンド・グラス。
ガウディは他の同時代の建築家と違って、いわゆる建築だけのデザインだけでなく、家具調度をはじめとする多岐な内装分野のデザインを直接手がけている。卒業と同時にデザインした街灯計画で、原寸模型と鋳鉄を作らせたプンティの町工場では、親子二代にわたり協同するマタマラと知り合う。彼は鋳鉄の型師だったが、ガウディの内装の目がかかると彫刻家になってしまう。ガウディの内装のいくつかを担当したアレホ・クラぺス(カサ・ミラのエントランス.ホールのフレスコ画も彼による)も、ガウディと協力すると斬新な力作を残すが、自身ではパッとした作品があまりない。このことは協同した建築家たちにもいえる。
《スペインではイスラム建築の影響で、格天井(Artesanado)がよく発達した。イスラム建築に接近していた頃のガウディの作品にも例外ではなく、グエイ館では各室天井ごとに違った格子天井がはられている。またダイ二ング・ルームの空間構成は明らかに、アルハンブラ宮の「裁きの間」にインスピレーションを得ている。マントルピースの左手のドアからは、ビリヤード室(現在図書館)、両側にある小ドアは奧にある物置へと通じている。》

図版 85〜89  Palacio Güell
グエイ館、屋上の彫刻群。
現在グエイ館はバルセロナ県庁の管理下にあり、演劇博物館として使われているため、展示用ショーケースや絵画、ポスター類の展示がされていて、ガウディが構想した、当初のインテリアを惚ぶのは難しいが、それでもガウディの他の作品が内装の素材に金をかけていないのに比べると、比較にならない凝り方をしている。特にこの館のためにデザインした家具(現在その一部グエイ公園内のガウディ記念館に保存されている)には、ガウディならではのユニークなものを残している。
ファサードのクラシックなコンポジションとは対照的に、屋上にはアブストラクトな彫刻風の煙突や喚起塔が18本建ち上がっている。そのうち最高のものは中央サロンのキューボラを覆うライティング・タワーで、内側からはイスラム・スタイルなのだが、外側は大理石片とコークスをはり付けた独自なものに仕上げている。そしてその先端には風見にコウモリと十字架(十字架は写真には見えない。またコウモリの翼は金属粉で覆われていた)が付いている。なぜガウディはこんな不思議なことをしたのだろうか。》


「ガウディの城」展カタログ

写真解説より

1989年刊行

後記
今では演劇博物館も移転され修復も終わり見事な完成当時に近い姿に戻されています。