はじめに

ガウディ ・マニア
“ガウディ研究センター” を10年間一緒にやっていた彫刻家、ルイス・ゲイブルトやサグラダ・ファミリア教会で現在、設計や現場の全般を見ている建築家、ジョルディ・ファウリも年齢からガウディとは実際には逢えなかった人たちばかりである。彼らは二人とも髭を生やして風貌さえもガウディに似せようとしているが、彼ら以外にもガウディに魅せられてしまった人は世の中に何と多いことだろうか。ガウディを直接知った人の中で建築に携わっていたフランセスク・ベレンゲール 、ジョアン・ルビオ 、ジョセップ・マリア・ジュジョール 、エンリック・スグラーニェス 、ジョセップ・F・ラフォイス、ジョアン・ベルゴス 、フランセスク・デ・P・キンターナ・ビダル 、イシドレ・プーチ・イ・ボアダ 、リュイス・ボネット・イ・ガリ 、セサール・マルティネイ という人たち、彫刻をやっていたマタマラ親子 などは今も記憶のなかに残る人たちだ。
ダリは直接ガウディと友好関係を持ったことはないが、世の中が近代合理主義に明け暮れているときにガウディを擁護し、世界に吹聴した。ミロはグエル公園のベンチをはじめとするガウディの作品からの影響を慎ましやかに作品の中に語っている。亡きアメリカの建築史家、ジョージ・コリンズはガウディをライトやミースと同じ近代建築の巨匠のなかに並べた 本格的な研究者だ。ジャーナリストでガウディ友の会で活躍した亡きエンリック・カサネイス、ナポリ大学教授でガウディはアール・ヌーヴォーのような表徴的な作家ではないとして両者を切り離した亡きロベルト・パーネ。スペイン国外でガウディ研究をいち早く始めた今井兼次。生涯をガウディ研究に捧げ、ガウディのフィンカ・グエルに住みついて定年後も研究を続けているジョアン・バセゴダ教授。オランダで二十五年間学生を引き連れてバルセロナに出張研究を続けているデルフト大学のひょうきんなヤン・モレマ教授。民族主義にかぶれずにマドリッドから距離をおいてモデルニスモジュジョールをも含めて研究し大著を出したカルロス・フローレスマドリッドで全二巻のガウディの研究書を出版した鳥居徳敏もいる。父ボネット・ガリを継いで現在サグラダ・ファミリアの建設に力を注いでいるジョルディ・ボネット、ガウディ友の会の理事を務め、グエル公園内のガウディ記念館の館長を務めていたジョセップ・マリア・ガルット。ラ・ペドレラをガウディのテーマ・パーク化した美術評論のダニエル・ジラルト・ミラクレ。映画時代の勅使河原宏は素晴らしい記録映画を作っている。九州芸術工科大学物理学元教授の松倉保夫、実測をいくつもやった田中裕也、写真家の細江英公、ある意味では今もサグラダ・ファミリアで石を刻んでいる外尾悦朗もそうかもしれない。パリでガウディのコレクターを続けているペドロ も同じだ。ガウディに魅せられた人はまったく数え上げたらきりがないほどだ。なんとガウディ・マニアが多いことか。