現代の大建築

ところが現在では国家の大事業ですら大して時間を使わない。建築ではないが、世界一長い吊り橋、世界一高いということで、ギネス・ブックで2つの記録を保持し、難工事といわれた明石海峡大橋ですら一〇年少々だった(1986年4月26日起工、1998年4月5日竣工)。国家の権威をかけ、バブル期の象徴的な建物である新東京都市庁舎などはコンペ開催が一九八四年、竣工が一九九一年で八年しかかかっていない。多発テロの標的になって崩壊したニューヨークのワールド・トレード・センターの建設は一九六六〜七三年だから足掛け八年。これはやはり、時間的に言えばやたらと短いのだ。
ごく最近では東京スカイツリーは着工が二〇〇八年の七月、竣工が二〇一二年の五月で三年七ヶ月ということになる。
何しろ納期、スピードが優先されるから、工程管理を充分にし、時間との戦いに多々なってしまい、サグラダ・ファミリア教会の延々と建設が続くロマンなどあろうはずがない。
サグラダ・ファミリア教会の建設は確かに最後の宮大工といわれた西岡常一さんのロマンにも通じる。『宮大工は仏さんに入ってもらう伽藍をつくるですから、造ってなんぼというわけにはいきませんのや。 ・・・儲けのことを考えていたんでは宮大工はつとまりませんのや』

木のいのち 木のこころ 天 新潮OH!文庫、2001年、P.18