バルセロナのガウディ建築案内番外編⑭

ボカベージャ家の祭壇 El altar del oratorio Bocabella1885年制作

サグラダ・ファミリア教会は1882年3月19日に起工式を行ったわけであるが、それからしばらく経って発起人である、ボカベージャは原案者ビジャールともめて、別の建築家を友人マルトレイから紹介された31歳という若いガウディに設計者を変えることになった。これが翌年の1883年末のことであった。ボカベージャはこの若い無名の建築家を気に入ったらしい。それというのも自宅に作るチャペルの祭壇をガウディに依頼したからだ。プライベートにチャペルを作るというのはローマの許可が必要で、これをボカベージャは申請し1885年にはガウディのデザインした祭壇が出来上がった。サグラダ・ファミリアではビジャールの設計した地下聖堂は完成し、ちょうどアプスの工事に入る時だった。つまりこれはボカベージャと知り合って最初にしたガウディの仕事ということだ。ボカベージャのガウディへの信頼はこれでも分かる。あるいは別な見方もあり、ボカベージャとしては若造にこの贖罪の教会建設という一大事業っを任せていいものだろうか、第一教会設計の知識があるのだろうか、では試しに家の祭壇を設計してもらって様子を見ようではないか。どちらなのか今となっては分からないが、当時のガウディはミサにも出ない人間であった。
祭壇は黒檀ででき、176 x 85 x 9 cmというサイズである。中央部分にはボカベーヤが集めた聖体が入るパネルがあり、その他3枚の額、それより小ぶりな2つの額がその周辺に取り付くというものだが、そのうちの中央の額には聖家族が描かれ、そのにはカタルーニャ語で“Jesus, Joseph y Maria, vos dono’l cor y l’ànima mia”(イエス、ヨセフ、マリア、我が心と魂を君に捧げん)と書かれている。
作者はレウス出身の職人フレデリック・ラボリア(Frederic Labòria)でレウス以来家族ぐるみで付き合いがあった人物で、これ以降サグラダ・ファミリアでガウディの仕事を手伝っている。
現在個人のコレクターによって管理されている。