バルセロナのガウディ建築案内番外編⑳

カフェ・トリーノCafé Torino 
1902年建設
カフェ・トリーノはマルティーニをプロモーションするために作られたバーで、ガウディの他プーチ・イ・カダファルク(Josep Puig i Cadafalch, 1867−1956年)、ペラ・ファルケス(Pere Falqués i Urpí, 1850−1916年)など当時の代表的な建築家がこのデザインに加わっている。このバーのデザインは1903年には市の年間建築賞のコマーシャル建築部門で受賞するが、1911年にマルティーニのプロモーションが終わると閉鎖されあっさりと壊されてしまったので数枚の写真が残るのみとなってしまった。ガウディの手が入ったと考えられる部分は、アラブ・スタイルで天井、壁には大きなプレス機を持っていた印刷業者ミラージェスが制作したであろう段ボールをプレスし、レリーフを作るという工法でパネルが作られ仕上げとされている。現在はバーがあった部分にTousのショップがある。しかし、このショップはもともとRocaという宝石商の店で、しかも実は1934年に建設された近代カタルーニャ建築の代表的な作品でもある。セルト(Josep Lluís Sert i López, 1902-1983年)はスペイン戦争後、パリ経由でアメリカへ亡命するが反フランコ共和党政府側にいたからであった。その第2共和政時代の建築でのアヴァンギャルドの時代に設計された記念碑的な店舗となっている。
また、新市街の店とは別にマルティーニのプロモーションのバーは旧市街のなかにも作られている。そこはプチ・トリノ(Petit Torino)と呼ばれ、画家でありインテリア・デザイナーのリカルド・デ・カンパニー(Ricard de Capmany i Roura, 1873 年–没不詳)が設計している。このリカルドはドメネク・イ・モンタネールの姉妹と結婚していて、ドメネクの改装したカネト・デ・マルのサンタ・フロレンティーナの城(Castell de Santa Florentina, Canet del Mar)を遺産相続で手に入れた人物であった。こちらはその後、壊されることなく売りに出され、現在でもレストランとして残され営業している。内部もまだまだそれらしい雰囲気が残されている。(Grill Room, carrer dls Escudellas, 8 Tel. 931157165)
所在地:Passeig de Gràcia, 18


外観


ガウディの担当した第2サロン

カフェ・トリーノがあった場所

セルトが設計した当時の宝石商Roca


レストランとして現存するプチ・トリーノ

バルセロナのガウディ建築案内 (コロナ・ブックス)

バルセロナのガウディ建築案内 (コロナ・ブックス)