バルセロナのガウディ建築案内番外編(45)

シュヴァルの理想宮 Palacio Ideal de Chaval
学生の頃読んだ学術論文には黒田正己の『ガウディとシュバルと二笑亭』(建築学会研究報告集25号, 1954年02月)というのがあった。当時ガウディというのはシュヴァルそして二笑亭と並列されて評価されていたということだ。
確かに同世代の人物だがシュヴァル(フェルディナン・シュヴァル, Joseph Ferdinand Cheval, 1836 - 1924年)とガウディはもちろん直接面識があったという記録も残されていないばかりか、片田舎で郵便配達人として生涯を過ごしたシュヴァルという人物が、600キロ近く離れているバルセロナまで行こうはずもない。それはガウディも同様だ。ガウディは北アフリカのセウタへ旅行しているらしいが、それも物見遊山の旅ではなかった。出張旅行だったのだ。北には若い頃に南フランス、カルカソンの中世都市やエルナにまでは足を伸ばしていることが分かっているが、シュヴァルのいるリオン近郊までは行っていない。では両者の接点はどこにあるのか。それは彼らが生きた世代に出回った、遠い国々の風物の情報を流したイラスト入りの雑誌ではなかったのだろうか。これらを通じてヴィジュアルな情報交換の時代が始まった時であり、ガウディはアフリカの、シュヴァルはジャバの異国情緒溢れる、版画、あるいは写真を見て刺激されたにちがいない。ガウディそしてシュヴァルの形態的なルーツはこれらの雑誌にあったのではないだろうか。アンドレ・ブルトンピカソの称賛は理解できるが、シュヴァルは建築には全くの素人で夢見の想像の展開であるわけだが、ガウディは建築のプロであるわけだから結果的には全く違った次元の作品を残している。

所在地;8, rue du Palais 26390 Hauterives - France
サイト;http://www.facteurcheval.com/