バルセロナのガウディ建築案内番外編(54)

グエルのコロニア・グエルの家
Can Solé
一般にコロニア・グエルと呼ばれる場所は工場部分と労働者の住む住宅そして、カジノ(今でいえば公民館)、劇場、学校、公売、教会(地下聖堂は本書の104〜107頁)、そして労働者の住宅と大きく2つにわかれている。工場は現在ではグエルの手から離れ工業団地として再生され、その一部が賃貸されて使われている。一方労働者住宅は今だかつてグエルの工場で働いていた子孫の一部が住んでいるが、現在の工場に働く人ではない住民がこれらの大半を占めている。この大きく分けて二つの間には実はカン・ソレ(アントニ・ソレの名前がイエス、マリアの名前とともにファサードの上部のまぐさ石に刻まれ、メイン・エントランスのキーストーンの部分には1692年という年号が入っている)という産業コロニーが建設される前の17世紀起源のマシアがある。このカン・ソレはチャペルを隣接させているという立派な家であるが、グエルがコロニーに来た時に使われた家で、外観はマシアだが、内部は手が加えられている。グエルは事業展開する場所にほとんど不動産を持っていたので、それは膨大な数に上っているが、うち良く知られているのは、ガラーフのワイナリーの横にガウディに作られたものだろうか。このインテリアの改装は誰が手掛けたのかは記録がないので定かではないが、素晴しい内部空間を持っているので、弟子のベレンゲールかルビオなのか、あるいはガウディのサジェスチョンもあったかもしれない。
マシアは一般にエントランスに入った部分は土間で、室内での農作業や、農機具、家畜などを入れるため、あるいはキッチンに充てられて、その上階が居住スペースとなっている。カン・ソレは中に入るとトップライトがあり、この構成が崩されている。この気持ちの良い空間は上階に上がると背面のファサード側には大きな開口が取られ更にダイナミックに展開されている。この大窓にはバルコニーが付きコロニーの労働者住宅に向かって開けられているが、ここから労働者に演説でもできるような外部にはオープンスペースが取られている。ここがメインのサロンである。
サロン中央にはマントルピースが一方にあり、耐火煉瓦をむき出しに使って囲っているがその内側の周辺には柔らかな粘土でもあるかのようにプレートを曲げた鉄細工がセラミックとともに使われ縁取りされている。全体では更にガウディが良く使ったプジュール・イ・バウシス社(本番外編32参照)のセラミックが貼られている。サロンなど全体に腰壁は木で縁取りされこの間はカサ・カルベを思い出させる板が斜めに貼られている。建具はこれも細工がされて、下部には開閉可能なメカニズムが付けられ、目隠しをされたまま換気ができるように工夫されているのも面白い。廊下にはパラボラ・アーチもある。
さらに興味があるのは地上階で、ここも誰かの手によってアーチを補強する工事がされたのが見えるが、ここではコロニーの教会設計のために懸垂模型が作られた最初の場所でもあり、地下には地上に出ることなく工場へと通じるトンネルもある。
所在地:Colònia Güell
アクセス:スペイン広場からFGCでColònia Güell下車, あるいは全ての列車が止まるMilí Vellで下車し700m歩く。個人住宅なので一般公開されていない。