第七章ゴシック/Gótico

ロマネスク時代のカタルーニャでは住民100に対してひとつの教会があったといわれる。これはひとつには中世カタルーニャの繁栄を物語るが、もう一方ではリポールの修道院とリポール市などという例外はあるにしろ、大半は農耕中心の小共同体単位に村落が形成されていたことを示しているのである。
ところが11,2世紀ともなると、カタルーニャは地中海という地理的利点を生かし、海外貿易に進出し、その成果を得てくると、社会構成はこれまでの大地主と小作農、農奴という農業集落に加わって、僧職者、有産階級、無産階級という都市生活が重要な意味を持ってくるようになる。当然ここに集中した都市人口に対応すべく巨大空間、あるいは多層空間の考案が生じてくる。しかもその性格は、富が宗教建築に集約されるわけではないので、むしろ装飾は控え目で、構造的合理性を求めることになる。
これに反して、カトリックの名のもとに聖戦化していたレコンキスタが進行している新旧カスティージャ地方、北部ポルトガルではおのずと教会へと権力と富は集中していくため、華麗で絢爛な宗教建築を生み出し、それにつれ“時代様式”としてのゴシックを受け入れたのである。
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