コメージャのショーケース

この1878年のパリ万博のスペイン館内に展示されたコメージャのショーケースは現存しなく、ガウディが自分の名刺の裏側に描いたスケッチ(名刺は現在レウスに保管)、また雑誌(Ilustración Española y Americanaの1878年9月22日号)に掲載されたイラストで知ることができる。長方形のベースに、上部が切妻型となったガラスの箱が載っている。このガラスはどうやら木ではなく透明感を強調するためだろうが金属でジョイントされている。ガラスの箱の隅部はバットレスのように補強のためか、装飾なのか木が使われている。切妻のガラスの箱には先端に鉄細工が付いている。内部は更に小さな祭壇でもあるかのように木の棚が入っているが、ここに並べたのだろう。展示するものが手袋という小さなものにもかかわらず全体としてはかなり表情のあるショーケースであろうか。むろんプンティの工場で作らせたものである。このショーケースをパリの万国博覧会会場で見た、エウセビ・グエイEusebi Güell i Bachigalupi (1864〜1918年)はこのデザイナーの卓越した才能をその中に見出だし、バルセロナへ戻ってからその作者を探し出し、後にその生涯のパトロンとなるという、ガウディとグエイの運命的な出会いのきっかけを作ったといわれるのがこのショーケースである。

雑誌に掲載されたショーケース

名刺に描かれたガウディのデザイン


プンティの工場でコメージャに知り合い、そこでガウディは名刺を取り出して得意の絵を描きながらデザインして見せ、見事さにコメージャに更に気にいられて、後はプンティと協働者のマタマラ何かと打ち合わせをしながら収まりを決めてショーケースを作っていったということかもしれませんね