エル・カプリチョ邸の装飾 

れんが打放しのファサードは,セラミックによって水平䖝が引かれ,窓にもそれによって囲まれている。その文様は、マドセンのいうアール・ヌーヴォーの主要なモチーフであるひまわりがレリI―を付けて焼かれている、セラミックは全部で三種あり,ひまわりの花.そして葉,緣一色である。ガウディは木々に囲まれた敷地に植物的な建築を築こうとしたのだろうか,そのエントランスの上に築かれた見晴らし台も、緑と花にびっしりと包まれてどこか植物的である。またこの塔は,スローブの上方、門からは奥にあたるというエントランスとしては不明瞭なその位置を明示させるのに役立っている。
ビセンス邸と同様、その豊かなオーナメントはイスラム的でもあり、ポ—チの円柱、柱頭には小鳥が飛び交うというように自然主義でもある。またここでも,鉄細工がオーナメントに大きな役割を果たしているが,その見晴台の手摺の植物的なデザインは、エクトル・ギマ—ルHector Guimard (1867〜1942年)のバリの地下鉄入口のそれを連想させるとはいえ、ギマールのデザインはそれより15年以上遅れた1899年ごろなのである。
とはいえこの作品中最も重要なことは,ガウディが弟子ベルゴスに語ったところによれば,ポ—チの円柱を傾斜させようというアイディアをガウディがこのとき持っていたことである。この傾斜柱はバラボラ・アーチと同様、ガウディの主要な構造エレメントとして繰り返し、また発展させられて使われていくが,その発想の発端はこのエル・カプリチョ邸にあったのかもしれない。