ボデーガの謎

ところでこの灰色のガラーフの石でできた小さいが美しい建物は、ガウディの作品ではなく、その弟子ベレンゲールの作品だと長年判断されてきた。例えばガウディの没後、アーカイブを整理し、ガウディについての最初の本を書いたラフォイスは「フランシスコ・ベレンゲールへの簡潔な敬意のしるし」と題する一章を捧げている。ここには7枚の写真が掲げられているが、そこではこう書かれている。「フランシスコ・ベレンゲールは献身的なガウディの弟子のひとりであったが、ガウディと協同したその上に、余りの影響享受とはいえひとつの個性的な作品をも残しているのである。」 「ガラーフ海岸にベレンゲールが建てたグエイ家のワイナリーは個性的で素晴らしい風景に順応した作品で、まがいもないアーティストであることがここにうかがえるものである。」
さてベレンゲールはラフォイスの言うように「ガウディの片腕」役をするために午後をサグラダ・ファミリア教会の建設に費やしていたが、午前中はグラシア市の市建築官ミケル・パスクアルMiquel Pascual i Tintorer(1846〜1916年)、マエストロ・デ・オブラのジョセップ・グラネールJosep Graner i Prat(1844〜1931年)、建築家ジョセップ・フォント(Josep Font i Gumà , 1859〜1922年)などのもとで生計を立てるためにアルバイト的な仕事をしていた。しかし建築家としてではない。というのもベレンゲールは、没後にその業績を讃えられて建築家のタイトルをもらうものの、生前は建築家としてはサインすることができなかったのである。