建物の帽子

カサ・バトリョの帽子

2004年10月10日撮影

側面の内パティオの下階にはファサード面へ向けてパイプが埋め込まれているが、これはパティオ下部の不十分な換気を助けようというものである。ガウディは当時もっと空気のいい山の手にある1906年から25年の間グエイ公園に住んでいた。喚起、日照などの配慮を建築に取り込むことを設計でも実現させていた。
全体の構成は地上6層、地下1層で、そのうえ屋根裏階が1層ある。1階は店舗に当てられ、2階がバトリョ家の住宅、この階以上は各層が二分され、貨貸し住宅にされ、最上階の屋根裏はガウディが常に用いた二重屋根の役を果たしている。『建物はね、二重の屋根がなくてはいけないのです。丁度人々が帽子や日傘を使うようにです。』ガウディの帽子はドラゴンの背中のようにうねりがあり、しかもファサードは鱗のような瓦で、内側は砕かれたセラミック、トリンカディスで装っているのである。

帽子の裏側


2002年1月8日撮影

正面ファサードはまた、光を柔らかく受けるためにゆるやかなうねりが付けられていて、更に淡い色彩でトーンが整えられている。これはガウディの「色彩の輝きは生命の活力」というはるか幼少のころ、タラゴナの原、リウドームスで送った日々の回想であろうか、早朝の光に照らし出された草原がそこにびっしりと付いた露のようなマティスに仕上げられている。ファサードは3種類の直径の違った陶器の円盤が散りばめられて構成されているが、それは一枚一枚が手書きにされ、下地に合わせて張られていくという具合で、その下地はベジェスグアルド邸で試みられた周到な方法でマティスが決められてる。しかしここはべジェスグアルド邸のような美しい自然に囲まれたわけではなく、華やかさと上品さを兼ね備えたパルセロナの繁華街であるわけで、青、緑、茶のセラミックとガラスの小片で彩られたのである。「色彩は生命なのです。死が最も視覚に訴えるものは、色彩の欠如なのです。この門を飾っているバラは、まだバラではないのです。というのもこの花の一番の特色であリ、1番の美しさは色彩だからです。けれどもこの門のバラにはまだ色彩が付けられていないのす。」
波打った壁面とその淡い色彩の漂いのハーモニーと同様に二階と三階の一部のトリビューン、一階の付け柱の石による彫塑性にはオリジナリティが溢れ、ラ・ペドレラへの予告がそこにある。壁面よりも更に荒々しく波打った石の彫刻は、より自然主義的であり、鋳鉄のバルコニーと共にガウディの豊かなインスビレーションが見られる。ある動物の骨のような柱の原形は既にカサ・カルベのエントランスに見られるし、バルコニーもカサ・カルベの最上部のそれに類似性が認められるのである。この時期に作品系譜の飛躍的な変貌があるにもかかわらず、実はガウディはまさしく反復に基づいた経験主義者なのである。『唯一の豊娩な方法は反復によることです。ベートーベンは10年前に使ったものを操り返しています。バッハも同じです。ベルダゲールは繰り返していたし、詩に手を加える時、以前に書いたものをまず模写したものです。』