図版11 ・12 La Sagrada Familia

サグラダ・ファミリア教会、御誕生の門鐘塔内部螺旋。
ガウディは独自な建築、審美学の論理を待っていたが、サグラダ・ファミリア教会のような巨大な建築を設計するに当たり、ゴシックの構造学を規範としている。ゴシック建築はR・コ一クのいうように、「建築技術に対するひとつの全く新しい取り組み方を代表したもの」であった。つまり、熟練の石工集団の積み上げた経験的な知識の蓄積から出発し、ひとつの科学として論理、系統付けられたため、机上の設計段階でとくに構造的な対応ができるのがゴシックであった。このため、大航海時代の植民地建築家たちは、建築技術の地盤のない植民地先への建築施工システムとして、ゴシックを待ち出したのであった。ガウディの時代はヴィオレ・ル・ドウックの影響下に、再びゴシック建築論が返り咲いた時であった。しかし、ガウディのゴシック論は、フライイング・バットレスを無用の長物として排除し、水平応力に対して柱を傾斜させることで対応させているため,ゴシック建築とはあまりにも異質なものとしてでき上がってしまった。
《螺旋階段をカタロニアでは,かたつむりの階段という。鐘塔へ登るこの階段はまさに螺旋階段ではなくかたつむりの階段であろう。》

名古屋デザイン博
「ガウディの城」展カタログ
写真解説より
1989年刊行