図版34, 35 Colònia Güell

図版34 - Colònia Güell
コロニア・グエルの地下聖堂、地下聖堂入り口。
ガウディの設計が10年という長い時間を必要とした理由は、彼の周到な設計プロセスが途方もない試行錯誤のうえに繰り広げられたからであった。この試行錯誤はというのは力テナリー模型と呼ばれた、ワイヤ一と小さな鉛玉の入った皮袋を使っての実験であった。つまり、ワイヤ一をあるたるみを付けて柱の位置にに吊り、その間に想定される荷重に見合った錘の役である皮袋を吊りさげる。そうして描かれた力テナリー曲線を写真に撮り、この写真の天地を逆にすると、力の流れに見合った構造体がそこに読み取れるというものだ。
《堂内で真直ぐな柱というのは、1本しかない。手前の柱も、上部の正面大階段の力の流れに無理なく合わせるために、內侧へと傾いている。》


図版35- Colònia Güell
コロニア・グエルの地下聖堂、大階段下ヴォールト(円形天井〉。
現時の構造実験模型と、ガウディの力テナリー模型とはその性格が全く遠っている。つまりが前者が解析上不明快な構造の性状をシユミレーションで確認してみることであるのに対し、後者は建築の形を決める基本的な手段として使われている。力テナリー模型の原型は単純明快なのだが、これを10分の1のスケールの数百本ある柱やリヴに置き換え、荷重想定するために実際の1万分の1の重さの鉛の入った皮袋を吊るしていく作業は、気の遠くなるほどの作業だったろう。
《レンガのリヴにカタロニア・ヴォールト工法で覆われている構造体にセメントで丸みが付けられ、セラミックの破片トレカンデイスで飾りが付けられている。》

名古屋デザイン博

「ガウディの城」展カタログ

写真解説より

1989年刊行

後記