ケーブル模型

ガウディは10年間を"懸垂模型"と呼ばれるもので設計していた。これは設計などと言う綺麗ごとではないのかもしれない。むしろ実験と言った方が正確なのかもしれない。この懸垂模型とは日本の大工が墨糸を利用して描いた"縄だるみ曲線"のようなものである。もっともガウディは墨糸ではなく、針金や糸を利用して模型をつくっていたし、ねじりを墨糸に与えるのではなく、鉛の小粒の入った小さな袋を吊り下げることによって曲線を描いていた。それに彼のケーブルは日本の大工の墨糸に似ているものの二次元と三次元という違い、そして経験主義と、実験という科学的試行による論理主義という明確な違いがある。
"ケーブル模型"についてもう少し詳しくみてみることにしよう。それは想定された柱の位置から糸が下げられ、それと対をなすつまりヴォールトで連結される柱の位置へあるたるみを持たせて固定する。そのあるたるみというのは内部空間のヴオリュームを決定するわけであり、そのうえ糸には幾つかの錘が吊り下げられる。これで二点固定された糸はある種の直線の連続となる。これを写真に撮り、天地を逆にすると柱とヴォールトの構造模型ができあがる。つまりいくつかの錘は想定された上部の荷重分の錘がそれぞれの荷重がかかる点へ吊り下げられているので、そこではその引力が写真の転倒で重力に変換されるわけである。これをいくつもの複合するディメンションとして構築していったのが"ケーブル模型"である。