図版137〜139  Casa Bofarull

ボファルイ邸。
ジョセップ・マリア・ジュジョール作、1914〜31年。
ガウディの多くの弟子たちのなかで、ジュジョールほど建築家らしくない建築家はいなかった。ジュジョールはいってみれば、器用貧乏であったために、廃品を組み立てて、ダダ以前にダダイスト的な作品を造ったり、何の変哲もない農家を、鉛筆一本でファンタスティックな宮殿に変えることのできる建築家だった。カサ・バトリョファサードや、カサ・ミラのバルコニーの鉄細工、そしてグエイ公園のベンチにしろ、ジュジジョールなくしてはできなかったのは疑いのないことだ。
ボファルイ邸は、タラゴナの片田含にあるエルス・パジャレゾス(Els Pallareso)村にある民家を、ジュジョールが1914年から31年にかけて改装したもの。ジュジョールが17年問という長期問を、このそれほど大きくない住宅に費やしたのは、ガウディがコロニァ・グエルの教会に10年という歳月をその研究に費やしたのと全く事情が違っている。というのも、ジュジョールはガウディが試行錯誤を繰り返していく上でデザインをまとめていったのに対して、器用なデザイナーがよくやるように、その場そのときのフィーリングと筆の動きを大切にしていた建築家だったからだ。たまたまこの住宅に長期間費やしたのは、バカンスをこの近郊で過ごしたため、バカンス毎の遊びに、左官や村の職人たちの力を借りて、向ら即興性と変身術の極地を楽しんでいたためだった。》

「ガウディの城」展カタログ

写真解説より

1989年刊行

後記