石工に模型を見せる

ラ・ペドレラは地階ができると、そこに十分の一の石膏模型が据えられた。 もっともその模型も建設の進行と共につくられ、手が加えられてゆくのであったが、それから図面を起こすのではなく、石工にそれを見せ直接十倍にさせた。 しかも切石は目地面だけが削られ、いったん積み上げられた後、ガイドとなる鉄筋がそのうえに貼り付けられ水平線が検討されたうえで始めてノミが入れられたのである。 この方法で建設が進められていったのは何もファサードだけではない。 例えば天井のこれまでカタルーニャで慣例とされていた仕上げの方法は、竹をスラブに張り、そのうえをスタッコで仕上げるのだが、ガウディは天井に波を打たせるためにスチール・メッシュを竹のかわりに使い、それをまず早乾性セメントでもって下塗りしておいて、大まかな形を整え、さらに作業中にも修正が加えられるように遅乾性セメントで下塗り、これをプラスターで最後に仕上げるという具合である。 ここにもはっきりとした設計作業と現場作業の一体化がみられるが、これこそガウディの空間の確かさをつくりあげることになった手法なのである。 彼は壇上の理論化でもなく、机上のデザイナーでもなく、経験主義の純然たる職人でもなかった。 しかし彼はその全てを兼ね備えていたのである。

図面では描けない曲線が

天井の漆喰