ファサードの大変更

もうひとつの大きな設計変更はアァサードにある。 それは図面上に現われない水平線の強調であり、塔と宗教的なレリーフの剥落である。 水平線の強調は模型あるいはノミを入れる段階に、鉄筋が張られた時に変更され、この建物全体のイメージである海の波を水平線の強醐に表現したのであろう。 同様に内厚なバルコニーの原案もコーナー部入口上のトリビューンを除いて実施段階ではより軽く、透明感のある鉄細工に置き換えられている。  塔と宗教的なレリーフは、バルセロナにモニュメントが欠けることを嘆いており、これでもって都市シンボル化させようと考えでいたのであるが、塔は模型段階で削られ(理由は明らかではない)宗教的なシンボルは施主の申し出によって設計変更された。 これはガウディをカサ・ミラの建設から手を引かせることになったほか、彼の人生のうえで大きな波紋さえ投げかけることになった。
構造は彼自身が言っているように、平面構成の変更が容易なように円柱で支えられたパーティション方式といえるものである。 その柱も三種類あり、荷重の大小と計画上での断面の大小などにより臨機応変に使い分けられている。 一番多く使われたのがポートランド・セメントで目地を埋めたレンガ柱で、断面を縮小したい場合には切石積み、それに時には鉄柱も使われた。 これに鉄骨を架け渡して大梁とし、それに小梁を架け、更に平レンガを筒状のヴォールトに張り、下部に鉄骨で引っ張りを加えてスラブとしている。  また円形パティオは図のような興味深いテンションリングがスラブを作っている。


このバルコニーの鉄細工についてはJosep Maria CarandellのLeyenda de La Pedrera, V Jornades Internacionales d´Estudis Gaudinistes, 1998,Barcelona, 105〜113頁に興味ある発表がされている。

ガウディはこの敷地に昔から祭られていたものがあったことを知り、ゲニウス・ロキ(地霊)がいたと考えていたらしい。しかし、アナーキストたちの焼き討ち事件が相次いで、宗教的なモチーフをファサードに置いてこれが宗教建築に見間違われることをクライアントは恐れ許可が出なかった。