カサ・デ・ロス・ボティーネス Casa de los Botines

作品解説
一八九一〜九十二年。 アストルガの司教館の建設と同時期、かつてのレオン王国の首都にガウディが残したのがこの作品。 グエルにとっては得意先である繊維商シモン・フェルナンデスとマリアーノ・アンドレスのための事務所兼住宅で、空掘りを巡らした地下があり、地上四階という規模の建物。市心にあって市庁舎に隣接するというこのうえない敷地に建てられている。 
ガウディは一八九一年十二月に建築申請図面を提出し、翌年一月着工、同年十一月に竣工という超スピードで建築工事を完成させている。 この一つの理由は軟弱な地盤のこの地方では常識だった杭を打たず、カタルーニャで一般的に使われていたべた基礎を使ったからで、工事が出来ないレオンの冬もこれで工事ができたこと、あるいは石工、木工、建具、鉄細工といずれもカタルーニャでガウディがいつも使っている職人たちが建設に参加したから出来たことであろう。工事記録からすると十ヶ月で完成したことになる。それでもエントランス上部に置かれた聖ジョージの像が設置されたのは更に翌年の一八九三年十一月十五日だったと記録されているが、これもバルセロナサグラダ・ファミリアの工房で長年の協働者マラマラによって制作されレオンに送られている。遠隔地であり設計監理も充分できなかったかもしれないが、ガウディ自らが全てを完結することができた数少ない作品のひとつとなった。 現在は銀行になっている。