アルハンブラ宮/Alhambra


サクラモンテから見るアルハンブラ
2006年2月19日撮影
アルハンブラ宮は、もとはといえばこのキリスト教徒との決戦に備えるために、南スペインに多く建てられた城館、アルカサールのひとつとして、シエラネバダ山脈を背景に、グラナダ市街を見下ろす赤い丘と呼ばれた丘陵地に9世紀建てられたものであったのを、初代グラナダ回教国王モハメッドI世(Mohamed Benalahmar,1232〜1273年)が24の塔を城壁で結んだうえで、転用したものである_。
以降グラナダレコンキスタである1492年まで休みない増改築にあったが、その間当初のアルカサールという軍事的性格は転換され、グラナダ回教国の栄華を唄った華麗さ、華美さを求めた純然たる宮殿的性格へと変貌していくのである_。このため外観の無装飾さに比べて、内部空間の限りない豊かさがあり、平面は錯綜をきわめるものとなったのである。このうちもっとも重要な増築はユスフI世のアラヤーネスのパティオ周辺とモハメッドV世のライオンのパティオ周辺である。
79ページより

西洋キリスト教文化がつくりあげたものの代表が、ヴェルサイユ宮殿なら、イスラムの文化がつくりあげた建築の粋は、このアルハンブラ宮です。「世界の七不思議」のひとつに数えられ、庭園は『コーラン』の中にある幻想的な「小川の流れる庭」そのものといわれています。その庭園、そして、シエラネバダの雪解け水を引っ張ってきたという水道・・・・、
吉永小百合著『街ものがたり』、講談社、2003年、77〜78頁


アルハンブラ宮からのアルバイシンの眺め

アルハンブラを含め、この時代につくられたスペインの庭園は、このパティオの連鎖体として営まれているのです。パティオを包み込むように配されたイスラム建築は、その美すべてを中庭に向けて集約されており、殊に、獅子の庭と、それを取り囲む繊細な列柱廊においては、精緻な装飾的表現、絶妙なプロポーション感覚など、庭という表現形式における究極の美の世界が描き出されているように感じます。
安藤忠雄建築に夢をみた』、NHK出版、2002年、224頁より