戦後から現在へ

40年代のスペイン建築は形式主義、そして観念形態の擬態を背負っている。その様子をよく示したのがエスコリアル修道宮のモニュメンタリズムを描出したグティエレス・ソトの航空省(1943〜1951年)や、戦没者の記念碑であるサンタ・クルス教会(Valle de los Caídos,完成は1956年)といったものであろう。
しかも政治的理由ばかりでなく、著しく荒廃した全土は、低廉なしかも早急な再建が要求され、そのうえ外国からの新情報の不足といったものがスペインの40年代の建築を困難なものに導いていった。これをカルロス・フローレスは《分散の世代》と呼び、継承されなかった建築運動を嘆くが、それは50年代に入るまで事実恢復しなかった。
ちょうど47年のフランコスペイン王位継承法の承認、50年の国連除外決議取消し、55年の国連加盟承認といったものに関連している。
こういったなかで、まず体制内での改革というものもあった。フィザック(Miguel Fisac,1913〜2006年)がその中心人物で、合理主義の再考というものに注意を払い、(科学研究審議会会館、1942〜1943年)、宗教建築に秀作を残し、(アルコベンダスの教会、1955年など)、後にはPSコンクリートの使用によって軽快で柔軟な彼独自の空間を手に入れている(マーデ研究所、1962年)。
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グティエレス・ソトの航空省, Madrid
1977年撮影

2011年7月4日撮影

バージェ・デ・ロス・カイードスの戦没者を祀る教会サンタ・クルス
1972年撮影, Madrid近郊