エル・カプリチョ邸の構成

エル・カプリチョ邸は3層構成で,下階は石積み,その上の二層がれんがでファサ—ドにむき出しになっている。住居として使われるのは,そのうちの第二層のみで,他階は車庫、女中部屋、物置、屋根裏部屋などになっている。
プランニングは、ビセンス邸と明確な共通点がみられる。ここではビセンス邸の門からクッションの付いた玄間へのアブーチというものが,門がないために不要であるが,アプローチの変化という玄間エントランス自体を45度ずらしている。やはり対称形平面で、玄間、室奥への進み方はビセンス邸と同様廊下を使わない方法によっているが,敷地にゆとりのあるエル・カプリチョ邸では,通過空間というより前室的な広がりの余裕を与えている。視点を変えれば,この室の空間的な意味あいは、合理主義型の住宅プランである通路の両側に並列された室,つまり通りの両側に並列された家屋的なコンボジションとは違い,パティオをコアとして周りを囲む、たとえば広場をとり囲む教会、市役所といった構成と似ている。45度に切られた偶部はここでは玄間ポーチとダイニング・ルームの両側にみられ,それぞれはエントランスとか、小バルコニーという役を果たし,外部との意外な連続を持たせているが,同時にファサードからは柔らかな波を打つエレヴェーションをつくり出している。


1975年2月撮影