Part 3 ガウディのアイディア

ガウディはカサ・ミラのために二つのブロジェクトを案出している。第1のそれは中央に一つのパティオを置いたもので,そのパティオに沿って二つの,つまり上りと下りのスローブを付属させることによって屋外から直接各戸まで街路を引き込もうという驚くべきダイナミックな構想である。というのも,彼には高級高層マンションというより,多層化された大邸宅というものが集合住宅のイメージにあったからであろう。もっとも彼の好んだ.集合住宅により近いのはグエル公園で計画された健康住宅タイブのものだったに違いないが将来,市の中心に位置するであろうことを見込んでいたカサ・ミラの敷地では,都市住宅化されるのが当然と考えていたのだろう。そこで彼は大邸宅をまさしく積み上げる,あるいは人工大地を積み重ねるという構想を,各戸へ直接車を導入させることで試みようとしたのであった。
このプロジェクト,というよりアイディァが実現されなかったのは、スケ一ル・アウトにあった。
というのもスローブの匂配が100分の10以下という当時の自動車の性能上、スロ一ブが巨大化してしまい,そのうえ当然のこと車寄せや車庫の必要性も生じてくるため有効スペースに対してサービス・スペースがその倍以上になってしまうからである。残念である。
これに対して第2のプロジェクトというのは,ほぼ実現されたものに近い性格を持っている。つまり,車庫を地下に.もっていってしまう方法である。そして二つのパティォを開けてそれを囲むように住居空間を配置するものである。


1972年2月撮影

続く

A+U

1979年5月号より