Part 5 カサ・ミラの構成

著作を何ら残していないガウディの建築論を再構するのは,ほとんど不可能であるが,それを助けてくれる弟子ベルゴスが書き取ったノートがあり,それよりかいつまんでみれば,快適な住宅は1戸150平方メートルが必要で,工夫すれば120平方メートルまで可能だが,2階建にした場合には,階段踊り場などが必要になってくるため300平方メートルは必要であると説いている。寝室は4x4 メ —トルなければならず一辺が短い場合は他辺を長くすること。階段巾は1.25 メートル,廓下はゆったりとさせるには巾1.25 メ—トル,労鋤者住宅なら1メートル,浴室はゆったりさせること,のびのびと着替えができるためで,もし身体の不自由な人のいる家庭なら2〜3人が同時に入れる広さにすること。また必ずしも寝室の側に置く必要はない。というのは離れていれば客用にもなるし,各人起床時問が違うので,使用時間もさまざまであるから。トィレはサイフォンを使えば直接の換気は不必要である。従ってガレリーとか隔離された場所に取ることもなく,他のどの住空間とも同等な配置ができ,面積が充分ない住宅の場合では浴室の中に設置することができる。食堂はサロンよりもっと大切な位置を占めるが,食堂とサロンはともに隣接していること。なぜなら友人を招いてのパーティも食事がなければ親密感が出ないからであり,そのためにもサロンと食堂は隣接しなければならない。寝室は直接換気が可能な位置に置くこと。奥まったところに計画すべきではない。台所は階段にも居室にも臭気を流さないために,換気用の特別なパティオに面して置くべきである。などと言っている。
これは若い,まだ建築科の学生になったばかりのべルゴスに対して語られた一種の個人教授であるが,60を越えた経験豊かな建築家の,しかも人間味豊かな教えをみることができる。
さてカサ・ミラはこのガウディが説く快適な住宅の床面積の2.5倍を持ち,廊下,通路,階段は1,2〜2メートルというゆとりを持たせ,寝室は静かであり,換気効率も高い内パティオ側に面して並置され,浴室とトイレは同一空間に収められて,その配置も决して寝室にむやみと隣接させてはいず,食堂はサロンと並置し接客のもてなしにも気を配っている。ブランでの特色は二つの円形,楕円形のパティオと内パティオ,それに6つの換気通風用の小パティオがあることである。これは20世紀に入ったバルセロナ市での最大の社会問題のひとつであつた呼吸器系の病気に対するメガ・ストラクチヤ一における唯一の対策であったのだろう。

続く

A+U

1979年5月号より