4/1 宗教への没頭と造形的解放

「思考というのは自由であるわけではない。真理の前に奴隷である。自由は思考の所有物ではなく、
(神意)の所有物である。」

ベジェスグアルド邸、カサ・カルベの建設を境にして、ガウディの造形は既成の審美学法則からより自由なものへと転換していく。1900年という世紀の変り目一致しているのも面白い。特にカサ・カルベではバロック・スタイルを踏襲しているにもかかわらず、そのディテールやこの家のためにデザインした家具はとてつもない摩訶不思議な形をしている。
しかもそれは宗教へより接近の時期と時を同じくしているのである。学生時代からサグラダ・ファミリア教会建築家になるまでの進歩的、あるいは自由主義者としてのガウディの姿はもう既にないのかもしれない。サグラダ・ファミリア教会建設というこれまで経験したことがない大規模な建設の技術的な問題の解決に必要な手法の学習と、この宗教的なプログラムの学習と分析、あるいはその周囲からの影響による宗教への接近の時期も終りを告げようとしている。つまり、神意の遂行こそ本来的自由であるといわんばかりな時期へ接近していくのである。ここには成熟した人間ガウディがある。
この時期の初めに二,三のそれも、規模も小さく完全には完成されることがなかったが,興味深い作品があるのでそれを次に見てみることにしよう。