IV ⑥ ダニエル・ナーバス+ネウス・ソレー Daniel Navas+Neus Solé

1953年バルセロナに生まれる。77年建築学校を卒業すると共に、同年生まれのネウス・ソレーと協働、79年から事務所を構える。ポスト・オリンピックの代表的建築家となるだろう。


―あなたはオリンピックが92年に開かれるので、そのために直接あるいは間接的な恩恵をなんらかの形で受けましたか。

いや、恩恵どころかまったく逆に大きな被害を受けています。

―それは、どういうことでしょうか。

我々は85年から、モンジュイツクの丘と市街区の中間にある、プエブロ・セコの地域開発の都市計画を担当していました。この一带は29年のバルセロナ万博の時に、フォレスティエによって庭園計画がされたのですが、プエブロ・セコに面する一帯では、フラグメントが何力所かに造られただけでした。
それは石の不連続な壁だったり、現在では荒れ放題になつている歩行者用の散歩道などでした。これらのエレメントを関連づけていく作業をやっとのこと今、提出したところです。
オリンピックの工事熱が高まるにつれて、この作業はネガティブに影響してきました。

―というのは。

まず、我々の担当している地域には、こまごまとしたプロジェクトが散在するというものだったのですが、市がビッグ・プロジェクトを完成させることばかりに努力を払うようになって、我々のような細かなプロジェクトに関心を示さなくなってしまつたことです。
それに一番のポイントとなる、モンジユイック丘の緑地をバックにして建ち並んでいる一連の住宅があります。
これは街のプロフィールを決定する、かなり重要なところなのですが、バラックが建ち並んでいるので、これを改築させようというのが我々の提案なのです。ところが、オリンピックのスター建築家ブームで、シザ・ヴィエイラヘプ口ジェクトの依頼が決まつてしまつたのです。これは、市の他の地域にも言えることで、これまで、小さな地区の小広場のプロジェクトが山のようにあり、実現されていたのですが、ビッグ・プロジェクトばかりに関心が集るようになってしまったのが昨今です。
先に話した一連の住宅にしても、基本設計の依頼を受けて、それをやっているうちにソーシャルな住宅ということですから、コストから住民の調査までやって、実現可能ということがわかって実施設計にまで入っていたんです。ただし、これはオリンピック施設のある方向からの観測としては、すぐ横にあるからということで、重要視されているのですが、実際にはマージナル(周辺的)な一帯ですから、ここの一連の建物をどうこうということで解決はできないのです。シザもこのプロジェクトの依頼を受けた時に、サイトに行ってみてびっくりしたようです。あんまりひどいところなんでね。
モンジユイック丘というのは、大変複雑な問題点を含んでいるところでしてね。例えば、自動車道にしてもレリダ通りを除いて、この地区に下りる通りというのがなくて、後はぐるり、ぐるりとまわり道になっている歩行者道しかないのです。この歩行者道に価値を与えるにも、バラックの建っている1帯に手を入れなければなりません。それで、プロジェクトがリアリティのあるものだとわかると、有名建築家というのがどこからか出てくるのです。
同じことが、電力会社の建物の場合にも起きました。

―あのプエブロ・セコにある、バルセロナのシンボルともなつている3本煙突のある建物ですね。

あれも、我々のプエブロ ・セコ地区の計画案の設計中に、リアリティのあるプロジェクトであることがわかつたものだから、指名コンペになり、やっばり持って行かれちやいましたよ。

―これも、あなた方にとってオリンピックの弊害ということでしょうね。

ただ現在では、地下鉄はコスト的にいって巨額すぎて、モンジュイツクまでの延長はできない。あれもこれもできない、ということがわかってきて、ビッグ・プロジェクトから、小さなことぐらいはオリンピックまでにやろうという風潮もありますから、かわってくるのかも。

―ところで、プエブロ・セコの地域計画を、きっちりと立派なかたちで提出したばかりということですが、今後どうなるのですか。

出したけどそれで終わり、なんてことになるかも。

―まあ市役所も、台所は火の車でしょうからね。

何せお金がないんです。

―あなたたちは、FAD賞をもらったことがありますか。

いや、応募したこともないです。まあ、当選しないとわかってるから。我々の場合、プロジェクトが多いんですけど、まず実現するのはごく少ないんです。欲求不満になリますよね。
完成したものが、例え手すリのデザインが、自分で考えていたものと違うものにできてしまっていても、触れるだけで気分がいい。プロジェクトが色々できてきて、それが政治的な構造と対立したりして、完成しないとまったくいやになる。それが6億ペセタかかるが、3億ペセタしか市役所にないというのなら、それはいいんだけど。別のところで話がいつも決まってしまう。
001その他、どういう作品を:^近やつていますか。

ゅ1いま、工場建築を完成させたばかりです。これはフィIネぐにもらいましたし。何しろご存知のように、公共^築というのは払いが恋くて、1年やーまはお然のような顔をしている。まったくまいっちやう。

AT 1990.02より