モサラベの建築風景 Vol. 4

サン・バウデリオ・デ・ベルランガ Sant Baudelio de Berlanga
11世紀初め/ソリア近郊/モサラベというキリスト教世界における回教建築というアンバランスを空間に最も明確に表現しているのがこの建物。聖人の修行のための庵であったのか、農村の礼拝堂であったのか、千年信仰の記念堂であったのか、記録が残っていないのでまるでわかっていないのだが、一説にはこの地方に共存していた回教徒とキリスト教徒が共有して使った建物としても考えられている。建物は二つの立方体ででき、一方には中央にシンボリカルな円柱が置かれ、それからリブが八方に向かって延びて架構を築いている。この円柱の一方が2層になっていて、さらに小さな円柱の連统で構成され、モスクの内陣を明確に想い起こさせる。そして、この部分の反対側には明らかにキリスト教空間である祭壇の置ける礼拝堂がある。また、円柱の上部には、ほこら状のくぼみがあり、これが宝物庫だったのか柱上修行の場であったのか。そして、くり抜かれた入口の洞窟までこの建物には盛り込まれている。壁画は現在、プラード美術館に保存されているのだが、これには象、ラクダというヨーロッパではまさしくエキゾチックな動物が描かれている。

中部建築ジャーナル1985年12月号より


プラド美術館に保管されている壁画

以下は堂内に残された壁画