御誕生の門

とにかく前任者の設計に制約されず、ガウディが本格的に自らのデザインを始めたのは、その後一八九四年に着工した御誕生の門で、これはプランもクリプトとは違って平面的な制約もなかったから自由に設計が出来た部分である。
ビジャールの平面が三身廊形式であったのに対して、ガウディが作った案は五身廊形式で、バットレスを身廊の内に組み込ませることで外観ではのっぺりとした箱型になり、すでにみたように交叉廊もクリプトへの階段を周辺に押しやっているので、内陣、身廊内には邪魔なものを置かず、がらんとした内部スペースを作るというカタルーニャ・ゴシックの空間に習っている。特異なのは、回廊で、会堂の周辺にぐるりと巡らすという他に類を見ない特異なタイポロジーを提示していることだ。
こうしてガウディは教会全体のヴィジョンが分かる図面を初めて提出している。これは無論ビジャールが作った案とも違っているのだが、その後ガウディが作ったプランともまたほとんど異質なものだ。どうやらガウディはこれを単に建築申請用の図面として考えていて、実際建築されるものと違うことをはじめから承知していたようだ。
現場が遠隔地にあって現場監理が十分フォロー出来ない場合、ガウディはかなりの数の図面や精巧な模型を作っているのだが、市内や自分で行けるところにあるその他の作品も図面をたいして残していない。