コロニア・グエルの教会

一番よく知られているのは、晩年に一〇年もかけて設計したコロニア・グエルの教会だろう。 この教会にはカテナリー模型とか、フニクラとか呼ばれているタイプの模型が設計の主な手段として使われた。 この模型は実は非常にリアリティーのある、つまり現在新しい車をデザインする時、風洞実験をするような方法でガウディが設計をしていたことが分かる。 
最近基礎が発見されたが、ガウディは教会建設の敷地に小屋を建て、この中で、紐と鉛の入った皮袋を使ってこの模型を作った。 まず、大きな板にプランが描かれ、それを天井から吊るす。 紐はアーチ、柱などの建築での主要な構造部材を描くためにプラン上に所定の長さで吊り下げられ、皮袋はそれぞれにポイントに想定される荷重に見合った鉛の粒が入れられ、紐に結び付けられた。 無論重力の関係で、アーチでは想定した荷重を紐にかけると下がるので、実際とは逆になるわけだ。 これをガウディは写真に撮って、紙焼きのコピーを反転させることで実際建設されるであろう空間が見えてくる。 もっとも、更にこれでプランに変更が加えられるというように試行錯誤が繰り返されたので、あっという間に一〇年の歳月が費やされてしまった。 三度の大変更があったことも分かっている。 今に残っている写真や、フライ・オットーによって復元され、サグラダ・ファミリア教会に展示されているこの模型は一見複雑な線が交錯して、あたかも抽象的な模型のようなのだが、構造を三次元で解析するのに中世の石工のように単に経験によるのではなく、実験的な方法で解いているというのは非常に面白いことだ。
この模型に布がかけられ面が作り出されると、これがヴォリュームのスタディ模型にもなったのだ。 ガウディはこの上下逆転させた写真に色を付けて、完成の姿までも想定していた。


ガウディのフニクラというタイトルの展覧会が開かれ、そのカタログが同名でINAX出版から出ている。1996年。