都市の零落

この間、都市計画上の改普処置が皆無とあっては、都市の零落ぶりは避けがたい。 しかも建築面積の増加からくる都市環境の零落だけでなく、使用建材の低質化もこれにともなって起きていた。
増築部分のほとんどは、既存部の石造に対して低廉で軽量であるレンガが使われた。 しかも、一七六八年のレンガ職組合は市に対して、「重い、しかも大ぶりのレンガ製造を強要されているが、購入側や左官たちは軽い小さなレンガしか使いたがらない」 といって陳情しているように、実質的な建材の低質化が認められる。
一七六八年、新たに軍事大将として就任したリクラ候は、この部市環境の現状を市に対して無規制であるとして勧告を発している 。 条文のほとんどは、職人たちの占める一階の手工業の仕事場や、小さな店舗の急増に起因している悪化した街路の整備というものに関してで、リクラ侯の七十二年の退陣まで飲料水の供給、市場の配置、市内交通といった人口急増を引き金として起きた都市構成問題解決に種々な処置がとられている。
具体的には一七七一年、建物に関する初の近代的規制条倒として発布きれ、これにはつぎのような内容が含まれていた。 街路に面した出店の許容巾、バルコニーのファサード面からの突出許容寸法、ブラインド付出窓や展望楼への課税、雨樋設置義務、バルコニーを延長して隣接の建物と連結させることへの規制などであるが、この種の規制が一八二三年と三十八年に市役所から出されている。
これらのなかでも特に注目に値することは、「ボラーダ」と呼ばれる街路側への二階部分からの張り出しを禁じたり、通りを渡って架けられた橋状の通路を取り払わせたりしていることだ。 一八二三年発布の条倒の十九条には「ボラーダ、ウイング、ブリッジは建設を禁ずる。 何人もウイング、ボラーダ、ブリッジを建てることはできない。 これに反した左官は十リブラの罰金、家主には費用負担で取り壊しを命ずる」とあり、次の二十条には既存の建物からのこういった突出物は二ケ月以内に取り壊し、違反するものは二十五リブラの罰金を課すと謳っている。

現在でも見られるブリッジ


Marina Lopez, Ramon Grau, 「Balcelona entre el urbanism barroco y la revolución Industrial」, Cuadernos de Arquitectura Barcelona, No. 80, p.36

1768年9月26日市の4名の議員はリクラ侯に呼ばれて勧告を受けている。 Marina López, Ramon Gra, 上掲論文P. 38に収録。

Fons Municipals de Plans i Projectes d´Urbanisme 1750〜1930展カタログ, 「Inicis de la Urbanística Municipal de Barcelona」, Barcelona, 1985年, pp.36〜44