バルセロナのガウディ建築案内番外編(47)

グエルの長女イサベルの家の改装 Reforma de la casa de Isabel
イサベル・グエル・イ・ロペスはグエルの長女としてバルセロナに1872年11月23日生まれている。(Isabel Güell i López, 1956年没)。イサベルはグエルの子供たちの間でも父親譲りの音楽に興味を持っていてバルセロナとパリでピアノとオルガンを学んでいる。パラウ・グエルの中央サロンでガウディは特製のオルガンを据えているが、ここでもイサベルはよくオルガンを弾き、グエルは娘が轢く時に脚が見えてしまうのを気にしていたが、これを聞いたガウディは大理石のカーテンを置いて脚を見えないようにしている。プロの音楽家として作品を残しているが、そのなかにはTe Deum (1918年)そして Stabat Mater (1917年)などがある。1901年にカルロス・セントメナット男爵と結婚(Carlos Sentmenat i Senmenat, marquès de Castelldosrius, 1862-1935年)。夫39歳、妻29歳といずれも晩婚であった。イサベルはプロの音楽家として活動していきたかったから結婚は考えていなかったのだろうか。新居のある場所はサン・パウの病院にほど近い、メディアンサバル通の19番地、現在のフンタ・デ・コメルス通にある。1850年以前にこの一帯は開発され、通りには整然とした区画割りに、同じような建物が並ぶという言ってみれば新興住宅街で、男爵と結婚したグエルの長女の家としてはどちらかと言えば質素といえるかもしれない。
家は1863年という年号がメイン・トランスのまぐさの部分に刻み込まれている。建物は1階プラス4層で、ファサードには装飾もなく、周辺の住宅と似た質素な面持ちである。
この新居の内装をガウディが担当している。エントランスは中央にあり、両側に2間ずつのコマーシャルのスペースがある。メイン・エントランスの巾は普通より幅が若干あり、これは馬車が裏側の中庭に停められるように考えられていたからであろう、いずれにしろ売り家であったわけで、ガウディはインテリアに手を入れた。残念にもスペイン戦争でこの辺りは空爆にあっているのでガウディの内装はどんなものだったか分かっていないが、次のエピソードが残されている。
イサベルが、結婚祝いにもらったグランド・ピアノがいかにも狭い場所に置かれたのをガウディにクレームをつけたところ、ガウディは「ピアノは止めなさい、ヴァイオリンをお弾きなさい」と答えたという。

所在地;Carrer Junta de Comerç, 19, Barcelona