カサ・ビセンス Casa Vicens

所在地:Carrer Carolines, 24

作品解説
一八八三〜八十八年建設。 この住宅はガウディにとってほとんど最初の建築作品である。タイル商マヌェル・ビセンスのための夏の別荘として、当時のバルセロナの隣接市グラシアに建てられた。申請用に描かれた蝋挽きの布にインキングという当時建築家が使っていた手法の図面が残されていて、これには一八八三年一月十五日という日付とガウディのサインが入っている。また、後年ラ・ペドレラでも抽象的な壁画を描いているクラペ(Alejo Clapés i Puig, 1850-1920)がパースを描いて一九一〇年のパリで行われた唯一のガウディ生前の国外での展覧会にも展示されたことが分かっている。その頃の敷地は一〇三四平方メートルあり、広大な庭にはレンガの化粧積みの噴水やベルベデーレ、噴水などが建設されたが、この図面にはこれらが明確には描かれていない。庭はオープンスペースとなっている建物の前面部分と横の木が植えられている部分というように分けられ、伝統的なランドスケープの手法が使われているが、これも建設が始まってから変更されたようだ。 さらに一九二五年にはジョアン・バッテイスタ・セーラによって北東側に増築され、一九六二年には庭のほとんどが売却されてしまい、さらに一九六四年にはアントニ・ピネーダによってステンド・グラスに手が加えられている。 それでも原型がよく残されているのが、サロン、喫煙室などで、現在ビセンス邸は売りに出されているものの、オーナーのエレーラさんはガウディのよき理解者なのでオリジナル部分はよく保存されている。個人住宅なので見学はできない。
アクセス:地下鉄(Ⅲ線)Fontana下車。徒歩五分。